私がレジスター会社の営業として初めて売ったときのこと

レジスター会社の新入社員として、私に課せられた1日のデモの回数は5回だ。

「マネージャー」あるいは「車両長」と呼ばれる上司と、二人一組で自動車に乗って行動するのだけれど、その日の行先はマネージャーが決める。

大体いつも店舗の密集している駅前へ向かうのだが、移動中に自動車から「良さそうな店舗」が見えると、路肩に自動車を止めて、新入社員の私がその「良さそうな店舗」に飛び込んでアプローチする。

私がレジスター会社の社員として初めてレジスター売ったのは、そういう「良さそうな店舗」に飛び込んだときだ。

その日、飛び込んだ店舗がどうして「良さそうな店舗」だったかというと、そこが新店だったからだ。正確には新店として改装準備中だった。

これからできる新しいお店は、レジスターをまだ準備していなかったり、新規客の集客に電子看板を考えてもらえたりすることが多い。

「ごめんください」と声をかけて未完成の店舗に入ると、作業をしている男性が二人。

早口だな、と感じながら要件を伝えると、いつものように拒絶する反応がない。

何となく雰囲気で話を聞いてくれそうだったので、「一度、電子看板を見てください」と言って自動車で待つ上司を呼びに行った。

電子看板は売れなかった。代わりにレジスターが売れた。

入社して初めて売れたのだけれど、自分の勧めた電子看板ではなくレジスターだったので、何だか相手のエラーで勝てた試合のように「売った」という実感がなかった。

「売った」という実感を持てる店舗に出会うのは、この日からずいぶん経ってからのことであった。

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